2008年6月14日午前8時43分、宮城県と秋田県との県境に近い岩手県南部で発生したマグニチュード(M)7.2の岩手・宮城内陸地震。この時、当地方は震度6強を観測し、栗駒山麓を中心に約3,500箇所で地すべりが発生した。この災害を貴重な資料として残すことにしジオパーク認定を申請、2015年9月4日、日本ジオパークとして認定された。
今日は栗原市主催の栗駒山麓ジオパーク見学会。梅雨の晴れ間となった絶好の見学日より。ジオガイドの人達とは日本最古の染色技術である藍染と栗原市文字地区の魅力を紹介している愛藍人(アイランド)で待ち合わせ出発、まず車窓から長屋門、番所を見学した。
長屋門は豪農の家に造られ、物置や作業場、使用人の部屋などに利用されていた。今はトタン屋根になっているがもともとは茅葺でその豪華さは「富農の象徴」となっていた。
仙台藩文字柿之木番所は1661年羽後街道鬼首関所の支配下で羽後岐(うごき)街道の要衝として設けられ、秋田藩との物資の交易、人の往来等の取調べを行っていた。
羽後岐街道のルートは
沢辺(栗原市金成)〜九戸〜高松〜文字〜平沢〜番所〜荒砥沢〜木立(キハキ)〜(世界谷地)〜大地鳥居(大地森分岐点)〜三木ぶな(腰抜沢を出た台地あたりにあったらしい)〜<湯浜温泉>〜<現国道398号線>〜田代長根(秋田県)〜小安
で、世界谷地から湯浜温泉までは徒歩のみの交通手段となっている。
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長屋門(栗原市栗駒文字) |

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愛藍人(あいらんど)
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仙台藩文字柿之木番所 |
次に向かったのは荒砥沢ダム。ここは国内最大級の地すべりが発生した場所。ダム湖(藍染湖)に流入した土砂により3mの津波が発生した。当時、洪水期を前に最高水位(277m)を268mまで引き下げていたのが幸いしたようでダムを超える津波にはならなかったようだ。それでも洪水吐きからは水が溢れ出たとのことだった。
最大の地すべりとなった所は、高さ150m幅700〜900m長さ1000mに渡り崩落し先端はほぼ垂直に切り立ち南東に300mほぼ水平に移動、移動方向にあった山にぶつかって停止した。これがダム湖を直撃していたら大津波が発生し大惨事になっていたと言われている。
地震動の加速度で一秒間にどれだけ速度が変化したか表す単位としてガル(gal) があるが、これは人間や建物にかかる瞬間的な力の事。ちなみに岩手・宮城内陸地震の際、岩手県一関市厳美町で観測した4022ガルの記録がある。これは地震による加速度としては世界最大級のもので「地震時に記録された最大加速度」としてギネスに認定された。いかに瞬時に大きな力が加わったかが分かる。
但し、震度同様、同じ地震でも観測地点の位置によって違う値を示すので荒砥沢の地点ではどれくらいだったのか今となっては想像するしかない。
他の例をあげれば、関東大震災の時がおよそ330ガル、阪神大震災では最大800ガル、東日本大震災では約2900ガルの加速度が生じたと言われており、岩手・宮城内陸地震のエネルギーの大きさが突出している。
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荒砥沢ダムと洪水吐き(余水吐き) |
藍染湖(あいぜんこ) |

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荒砥沢地すべり
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藍染湖石碑と地すべり |
山が激しくぶつかった所 |
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羽後岐街道荒砥沢側(土砂崩れにより通行できない) |
羽後岐街道冷沢側(街道としてはもう少し冷沢よりにある) |
次に向かったのは冷沢(ひやしざわ)崩落地。地質は左岸と右岸で違うようで、左岸は軟らかい地盤で復旧工事としてアンカー工法と法枠工法がとられているようだが、右岸はネットを張っただけのワイヤー被覆工法が行われたようだ。
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冷沢とその崩落地 この橋手前まで土砂が流入したという
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冷沢崩落地 真っ直ぐあったはずの道路は崩落して今はない
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荒砥沢活断層の先端にあたるとのこと |
道路は崩落し下から見上げるようになっている
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道路は穴があったりでこぼこしていて危険だ |
コンクリート柱は折れて倒れたままとなっている |
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真っ直ぐ向かった先の道路は崩落してない
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冷沢に向かって左岸の地質は複雑なようだ
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能島画伯のアトリエ 今も使用しているようだ |
御沢(おさわ) 土砂流入により養殖岩魚が大量死した |
世界谷地は栗駒山の噴火によりできたもので、標高669m〜707mの位置にあり、広さ14.34ヘクタールの細長い湿原である。この時期はニッコウキスゲの花が見事で、この日も大勢の見学者が押し寄せ駐車場は満車状態だった。
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世界谷地 ニッコウキスゲが見ごろをむかえている
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ツルアジサイ
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ウラジロヨウラク
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ナルコユリ
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タニウツギ(ほぼ咲き終えている)
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ギンリョウソウ(銀竜草)別名ユウレイソウ |
アオダモ(バットの素材) |
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ツクバネソウ
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ネバリノギラン
(花はこれから咲くようだ) |
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ショウジョウバカマ
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レンゲツツジ
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ニッコウキスゲ
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アサヒラン
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キンコウカ
(花はこれから咲くようだ)
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ワタスゲ
(ほぼ咲き終えている) |
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トキソウ(見づらいがピンクの小さな花)
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サラサドウダン |

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世界谷地に通じる道路 ここも羽後岐街道である エゾハルゼミが盛んに鳴いていた |

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冷沢方面(世界谷地) |

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櫃ヶ森 (ひつがもり)方面(世界谷地) |

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モリアオガエルの卵(世界谷地) |
行者滝は栗駒山が信仰の山であった時、行者の方や参拝の方が山頂にある勅宣日宮駒形根神社にお参りする前にここの滝に打たれて身を清めたことからこう言われている。
復旧工事の中で突如現した柱状節理は、右側のやや白い部分が今回の地震で崩れた所。今後、行者滝から歩いて5分ほどの位置にあり観光の目玉とするのかもしれない。
柱状節理とは、高温だった
マグマが地表に出て冷やされることで体積が減少し規則的(4〜8角形)な割れ目(節理)が出来ることで、宮城では白石市の材木岩が有名である。
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行者滝 |
ミズナラの幹を防護柵が貫通している |
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柱状節理(復旧工事の中で木々を整理して姿を現した) |